書こう書こうとは思っていたものの、ずっとスルーしていたのだが、まぁ、ちょうどいい機会なので、 一度まとめておこうと思う(なんか、サマータイムのときと同じだな(笑))。 なお、請願の全文が手に入ったら、大幅に改訂する可能性があることをあらかじめ付記しておきます。
とりあえず、えろげユーザー含めこれを見た人にお願い。規制論に対して、決して感情的な反応は示さないでください。 感情的な反応を返すことは、規制論の助けになることはあっても、規制撤回には進みません。 感情論の応酬となってしまったら、絶対に数の力には勝てません。 落ち着いて、いかに規制論が不備な主張であるかを指摘する方向性で対処をお願いします。
今回の請願に反論する前に、まず表現規制に関する自分のスタンスを明記しておきます。
自分のスタンスは「表現規制はその違法性にのみ留意すべきであって、社会一般の認知度または許容度に影響されるべきものではない。 ただし、見たくない権利には十分に配慮しなければならない」というものです。 平たくいうと「例え国民の99%が眉をひそめる表現であったとしても、明確な違法性がないのであれば規制してはいけない。 ただし、見たくない人が見ないで済むように、どのように公表するかについては、十分注意を払うべき」ということです。
さて、では前置きはこれくらいにして、本題に入りましょう。
まず、法務委員会に付託された該当請願の情報はこちら(新しいページで開きます)。
これだけじゃ、内容がわからないので、あちこちで引用されている以下の記事もあわせてお読みくださいませ。
■「エロゲーは危険な社会を作り出す凶器」――規制を求める請願、衆議院に
現時点で全文が見れていないので、上記記事に書かれている内容を元に話をしますが、 どうやら5月に円より子参院議員が付託した請願とほぼ同様の内容と思われます。
記事を順番に見ていきましょう。
「ランドセルを背負った小学生の少女をイメージしているものが多く」えろげユーザーはほぼ同じことを言うと思いますが、 ぱっと見小学生だろうと思うようなキャラは決して多くありません。 実際に、ソフ倫(コンピュータソフトウェア倫理機構)などは、キャラの頭身について指針を示しており(俗に言う5頭身規制)、 極端に幼児体型のキャラは現状表現できません。
また、そもそもここで言及されているやランドセルについては、ソフ倫では2001年から自主規制として事実上表現できなくなっており、 仮にもうひとつの倫理団体であるCSA受審された作品で表現されているにしても、 現在の受審シェアからして、到底「多い」といえる状況にはなり得ません(とっさに数字が出ませんが、今度ちゃんと調べておきます)。
ランドセルなどの象徴的なものがない場合、キャラの見かけから年齢を判断することになりますが、 一部の実写的なイラストを除けば、大多数はデフォルメされたキャラであり、一部を誇張・省略することがデフォルメである以上、そこから年齢を読み取ることは、非常に困難であると言わざるを得ません。 正直、このようなイラストに長く接してきた自分などでさえ、ぱっとイラストを見て「○歳くらい」とはとても言えません(もちろん明らかなものはありますが)。
以前行われた市民団体の調査で「制服」や「体操服」などを着用しているものが「未成年表現」としてカウントされたものがありましたが、 もしこれをそのままえろげに適用して規制対象とした場合、「成人が着用する」ことを前提とすれば実写で表現可能なことが、イラストでは表現できないという逆転現象が発生することになります。
「アダルトゲームで青少年は心を破壊され、人間性を失う」人間性を失うかどうかについては、 誰も明確な調査を行っていない以上、この断定はまったく無意味なのでおいておくとして、 根本的にアダルトゲームはその名前の通り、18歳未満には販売できません。 18歳未満には販売できない商品に対する批判として、青少年への影響に言及するというのは、率直にいって理解に苦しみます。
この論調をそのまま他の「大人の娯楽」に適用するならば、「未成年の飲酒は健康被害が発生しているため、酒類の販売を規制すべきだ」、 「競馬等の公営ギャンブルは、未成年の金銭価値観の崩壊につながっているため、公営ギャンブルは規制すべきだ」ということになります。
これがいかに的外れな指摘であるかは、論じるまでもないでしょう。 青少年への被害云々というのであれば、いかにして青少年の手に渡らないようにするかを議論すべきであって、 そのものを排除しようとするのは、特定表現を対象にした弾圧でしかありません。
「幼い少女達を危険にさらす社会を作り出していることは明らか」これも上記と同様で、 何を根拠として「幼い少女達を危険にさらす」のかがまったく理屈としてわかりません。 二次元のキャラクターに対する性欲については、精神科医である斉藤環氏の言説を引用します(発言はすべて松文館裁判第7回公判より)。
氏の言説によれば「現実において女性に向かう性欲の領域と、二次元上に描かれた女性あるいは女性のような図像に対する欲望とは全く異なったもの」としており、 「二次元のキャラクターに対する性欲は一種のフェティシズムであり、一般性のあるものではない」としている。 ここでいう「一般性」というのは、端的にいえば「見慣れていない人間はエロ漫画では性的興奮を得られない」という意味です。
特に重要なのが、前者の「現実の性欲と二次元上の性欲はベクトルが異なる」という部分で、 二次元のキャラというのは必ずしも現実の人間などを投影しているものではないことです。 あくまで、その存在自体が「ファンタジー」なのであり、その「ファンタジー」は決して現実に出てくることはありません。
次に、メディアの悪影響論についてですが、数々の反証が世の中にはありますが、ここではその例として、 宮台真司氏(首都大学東京教授)が松文館裁判に提出した意見書(新しいページで開きます)を紹介します。第二部に悪影響論に関する論説があります。
まったく根拠を挙げず、悪影響論を振りかざす言説より、遥かに説得力があるのは明らかです。
さて、長々と書いてきましたが、今日のえろげの状況と今回の請願に記載されている内容がこれだけ乖離していることことからもわかるように、 ろくな調査も行わずに、規制を求めているのは明らかです。 最近ともすれば「自分が不快であること」を「社会通念上許されない」という、言葉の置き換えで表現する人が増えているように思いますが、 この件にも同じようなものを感じてなりません。
いずれにしても現状が理解されていなければ、建設的な議論を行うことはできません。 指摘が真に迫っている内容であれば、業界側も真剣に検討せざるを得ないでしょうし、より良い方向性に進もうという動きも出てくるでしょう。 今回の請願も、例えば「青少年に一般的に渡っている状況をなんとかしてくれ」ということであれば(そういう現実があるかどうかはともかくとして)、議論の余地はあるでしょう。 しかし、このような「言いがかり」を吹っかけられても、業界は対応の仕様がありません。正直この内容では「いや、そんなことはありません」しか言えないので、一切先に進めない。 何せ、前提として書かれている状況が現実に合っていないわけですから。
規制を求める側も、もし本当に児童(なぜ請願は「少女」に限定されているのかも、かなり疑問です。「少年」に対する性犯罪は増加してるのに)に対する性犯罪を減らしたいのであれば、 見たくないものであってもきちんと見て、真剣に状況を分析するべきです。 単に目に付いたものを場当たり的に規制しても、そうそう結果はついてきません。 少なくとも、今回の請願の内容を見る限りでは、真剣に性犯罪を撲滅しようとしているとはとてもじゃないけど思えません。
こういっても、おそらく規制派の人は信じないでしょうが、児童に対する性犯罪を撲滅したいと願うのは、 えろげユーザーであろうと同じです。むしろ、そういう犯罪が起こるたびに、犯罪者予備軍のような目を向けられるえろげユーザーの方がより切実でさえある。
えろげというのは、言うまでもなくサブカルチャーです。今後もサブカルチャーであり続け、 決して一般化することはないでしょう。個人的には、一般化していいものとも思いません。あくまでマイノリティの趣味であるべきです。
しかし、だからといって、そのサブカルチャーが半ば言いがかりで排除されるようでは、 社会としてどうなんだという思いはあります。
単なる1ユーザーの言説ですから、わたしの言うことなぞ、何の力もありませんが、 思うところは、細々と書き綴っていく所存です(最近えらいサボり気味ですが)。 まぁ、色々考えていただければ幸いです。








