[本]

「天使のナイフ」。 / 2006-04-04 (火)

 「殺してやりたかった。でも殺したのは俺じゃない。妻を惨殺した少年たちが死んでいく。これは天罰か、誰かが仕組んだ罠なのか。 「裁かれなかった真実」と必死に向き合う男を描いた感動作!第51回江戸川乱歩賞受賞作」。

 読み終わったのはしばらく前ですが、全然書いてなかったので、書いておこうかと。

 というわけで、「天使のナイフ」(薬丸岳、講談社刊)です。

 冒頭に書いたのは、この作品の帯文。この本は「容疑者Xの献身」で書いた、週刊文春ミステリベスト10の2位に選ばれた作品。 主人公はかつて妻を少年3人に殺害された遺族で、事件に関するマスコミ取材で「法が裁かないのであれば、犯人を殺してやりたい」と言ったことがある。

 事件から4年経ち、その犯行少年の1人が主人公の職場近くで殺害される。動機は十分、アリバイもない。主人公は堂々たる第一容疑者だった…。

 序盤のストーリーはこんな感じ。まぁ、ぶっちゃけ、話は暗いです。爽快なミステリを求めている人には絶対お勧めしない。 ただ、ミステリというよりは、しっかりとした社会派の物が読みたい人には絶対のお勧めです。

 主人公自体が少年犯罪の被害者遺族なわけですが、この本には主人公の妻の事件を含め3件の少年犯罪事件が出てきます。 被害者遺族、加害少年、更生施設の人々、人権派弁護士などがそれぞれの視点から少年犯罪について色々な意見を口にします。 それを聞き、主人公は時に反発し、時に相手を理解していくわけですが、読んでいる読者が何を感じるかが重要ですね。 きちんと彼らの抱いている想いを受け止められるかどうかで、この本の評価は大きく変わると思います。

 物語は中盤から、大きく動きます。ミステリなので詳細は伏しますが、まさに糸がほどけるように、クライマックスまで一気に話が流れます。 きちんとミステリとしての体裁は整えていますが、謎解き自体が好きな人には、ご都合主義に見えてしまうかもしれません。

 この本は乱歩賞の受賞作ということで、作者にとってはデビュー作になりますが、 そんなことは一切気にならない作品です。次作に求められるものは非常に大きくなるでしょうが、楽しみではありますね。

 この本を読み終わって、少年犯罪と社会が抱える歪み、また更生とは何なのか、そういうことを色々考えました。 わたしは、少年犯罪については、個別に判断し必要であれば何歳であろうと厳罰に処すべし、というのが考えですが、 これを読んで、擁護派の考えも少しわかった気がします。また、なぜそれぞれの主張が頑なであるのかも…。

 強い信念を持ち、それが正しい道だと信じない限り、擁護派であろうと厳罰派であろうと、当事者に近い位置に立つことはできないのですね、きっと。

 いずれにしても、自分にとって、非常に強い印象を残した本となりました。 気持ちに余裕がない状態だと、作品と一緒にダウナーになってしまうかも知れませんが、 そういう状態ではなく、興味を持たれた人がいれば、是非一読をお勧めします。

 余談ですが、この本、巻末に乱歩賞の選評が書かれているのですが、今回選外となった作品へのコメントもそのまま掲載されています。 その作品のいくつかがとっても読んでみたくなりました。…もちろん、出版されてないので、読めないわけですが(苦笑)。


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